プラスチックレンズは繊細な光学製品です

下記の図は、標準的なレンズコーティング(ハードマルチCSコート)の構造図です。

無防備なプラスチックレンズの生地を、幾層にも重ねた「コーティング」で守っています。しかし各コーティングは極めて薄い膜のため、使い方によってはキズが付いたりコート膜が剥がれたりします。プラスチックレンズの性質をよく理解し、正しい扱い方を心がけることが大切です。

ハードマルチCS(標準タイプ)構造図

■ ハードコート [キズ防止コート] :プラスチックレンズの場合、レンズ素材が外にむき出しだと簡単にキズがついてしまいます。そのような軽いキズを防ぐコーティングです。

■ マルチコート[反射防止コート]:レンズ表面の反射を防ぎ、視界を明るくさせるコーティングです。マルチの反射色はグリーンが一般的です。

■ CSコート[撥水コート]:レンズ表面の撥水性能を向上させたコーティングです。フッ素膜の改良により、水や油をはじくため、汚れが付きにくくなります。

コート剥がれの要因

※ 掲載写真はレンズ状態をご理解頂くための一例です。

キズ・熱クラックによるコート剥がれ

キズ・水ヤケによるコート剥がれ

 コート剥がれは修理ができません

プラスチックレンズの表面に装着してあるコーティングは、一度剥がれてしまうと再生することは不可能です。

コート剥がれの要因としては以下のものが挙げられます。

  • キズからのコート剥がれ
  • 熱によるクラック(ひび割れ)からのコート剥がれ
  • 水ヤケからのコート剥がれ
  • 化学製品などによるコート剥がれ

キズ

拭きキズ

プラスチックレンズの素材は柔らかいため、キズに強いコーティングを施していても、扱い方によっては簡単にキズが付いてしまいます。

プラスチックレンズ使用時、以下のような行為には注意して下さい。

  • レンズに異物が付着しているときは、カラ拭きせず、一旦水洗いしたあと水気をきれいに拭き取り、そのあと「レンズ専用メガネ拭き」で軽く拭いて下さい。
  • メガネを置くときは、レンズ面を下に向けて置かないようにして下さい。
  • メガネをむき出しで鞄やポケットには入れず、必ず専用ケースに入れて持ち運びして下さい。

熱によるひび割れ(クラック)

熱によるひび割れ(クラック)

プラスチックレンズの素材は熱を加えると膨張するという性質を持っています。

一方、レンズ表面に装着している反射防止コートは金属成分が含まれており、膨張・収縮などには対応できないため、レンズ素材が膨張するとひび割れ(クラック)が生じてしまいます。

プラスチックレンズ使用時、以下のような行為はしないで下さい。

  • メガネを熱湯につける
  • ストーブ、たき火、アイロンなど高温のものに近づける
  • 炎天下の車中(80℃以上になる場合もあります)に放置する
  • ヘアドライヤーなどの熱風にさらす
  • サウナで使用する

水ヤケ

水ヤケによるシミ

プラスチックレンズの表面に装着してある撥水コートは水や油を弾きますが、水滴などに含まれる汚れの成分によっては、放置しておくとそのまま乾燥し、水ヤケ(シミ)になって固着してしまう場合があります。

プラスチックレンズ使用時、以下のような行為には注意して下さい。

  • プラスチックレンズは水気を嫌います。濡れたままにしておくとシミになり、そこからコート剥がれが生じる場合があるため、水分が乾かないうちに拭き取って下さい。

化学製品などによる溶解

化学製品・薬品などによるシミ

化学製品や化粧品、薬品などがレンズ表面に付着すると、その成分によっては表面のコーティングが溶けてしまい、シミのような状態になる場合があります。

プラスチックレンズ使用時、以下のような行為には注意して下さい。

  • レンズに整髪料・ヘアスプレー・化粧品・薬剤(トイレ・浴用洗剤)・カビ取り剤・アルカリ系洗剤・酸性洗剤・有機溶剤(シンナーなど)・汗・レモンなどの果汁が付いた時はすぐに水洗いをし、すぐによく拭き取って下さい。